会長挨拶

会長挨拶 

  2020年4月より第8期(2020年4月1日~2022年3月31日)の日本NIE学会会長を務めることになりました京都教育大学の平石です

 「NIE(エヌ・アイ・イー)」は“Newspaper In Education”の略で、「新聞教育」や「新聞活用教育」などと訳されることもありますが、なかなかぴったりした訳語がないため、そのまま「NIE」と称しています。「教育の中で新聞を活用していこう」という運動は、1930年代に米国で始まったといわれています。日本では1980年代からNIEの取組みがはじまりました。

 

 「このデジタル時代に、なにをいまさら新聞か?」と思われる方もいるかもしれません。

 たしかに、各家庭に届いた新聞が毎朝、広げられるという風景は、もう当たり前ではなくなりました。「ニュース」はもっぱらネットでみるという人が多いのも事実です。

 

 しかし私たちは、だからこそ「新聞」のもつ教育的価値を、あらためて考える必要があると考えています。

 新聞紙面には、私たちの生きる世界のさまざまな出来事が「ニュース」として選びだされ、記事として並べられています。私たちは新聞を広げることで、いま自分たちの生きる世界に何が起きているか、どんな問題が生じているかを知ることができます。いままで知らなかったこと、知らなかった人と出会うこともできます。

 学習指導要領は「思考力・判断力・表現力」の育成を求めています。新聞は、自分の生きる世界の物事について考え、そして自分なりの意見をもち、人に伝えようとする活動を通して、こうした能力を育てる格好の材料となります。

 「紙の新聞」だからできること。私たちはいまこそ、このことをきちんと考えたいと思います。

 

 その一方で、いま新聞は「紙」だけではありません。世界では、すでに紙の読者よりも電子版の読者の方が多いということも珍しくありません。ネット・ニュースも、じつは多くは新聞発のニュースです。

 NIEも、紙の新聞だけでなく、ネット上の「ニュース」も含め、もっと視野を広げていく必要があります。

 とくにネット上に玉石混交のさまざまな「情報」が飛び交う時代だからこそ、情報をきちんと読み解き、その意味をとらえ、考えることのできる「クリティカルな読解力」を育てていかなければならない。このように私たちは考えます。

 

 日本NIE学会には、社会科教育、国語科教育はじめ、数学科教育、英語科教育、特別支援教育、医学教育などなど、多様な分野にわたる学校教員、大学教員、大学院生が参加しています。また学校教育関係者だけでなく、新聞・マスコミ関係者、塾や予備校の方、社会教育関係者などなど、広く多岐にわたる方々により構成されている学会です。

 学会員に共通しているのは、「新聞を活用することで、教育をもっと豊かで実りあるものにしたい」、「これからの時代をになう子どもたち・若者たちに、もっと新聞を楽しく読んでもらいたい」という思いです。

 日本NIE学会は、学会員がそれぞれの立場から意見や研究成果を交流し、ともに高めあえるような場でありたいと考えています。

 

 学会員の皆様には今後ともより一層のご支援を賜りますようお願いしますとともに、また教育での新聞活用に少しでも関心をお持ちの方に広くご参加いただけますよう期待しています。

 

 

日本NIE学会会長 平石 隆敏(京都教育大学 教授)